1993年 3月20日生まれ アングロアラブ 牡馬 黒鹿毛
生産者 南牧場 北海道新冠郡新冠町
父:ローマンプリンス(サラ) 父:ブレイブェストローマン(サラ)
母:フエアアスター(サラ)
母:タイリヨウラーク(アア) 父:ライブリーラーク(サラ)
母:タイリヨウヒカリ(アラ)
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才彼との出会いは・・・決して劇的でもなく、ドラマチックでもありませんでした。 高知競馬、某厩舎のアラブ馬、牡馬、8歳。面構えは・・・そう、男前でもなく、渋い黒毛に額に小さい星一つ。戦績も・・・アラブの格下で走り続ける・・・馬の持つ“華”があるとはけして言いがたい、とても地味な馬でした。 幾度となく高知競馬の厩舎棟へ足を運ぶたび、なんとなくそこに居る、おとなしくてかわいい子、ただそれだけでした。その一方、幾度となく足を運ぶたび、不思議と気になる一頭・・・になってしまっていました。 現役競走馬にしては異常なほどにおとなしく、なつこく、ボーッとしていました。「これで走るんですか?」と聞いた程です。
用事で厩舎棟に行くたびに、必ず彼の顔を見るようになり、厩務員ご夫妻と何の気なしに「この子ほんとにかわいいですねぇ」「走らなくなったら牧場でもらってや」などと、会話をするようになっていました。
もちろん今の牧場の運営上、安易には引き取ることは出来ない、高知競馬の引退年齢の制限がなくなった事もあり、まだまだ彼の引退は先のことだろう、行く行くはこんな無名馬も引き取れる体制にしたいなぁ、と希望をも含めての、何の気ない会話を彼の前でしてしまったのです。
そして・・・約半月後、ある用事で厩舎棟へ行き、その日も又ミナミの馬房を覗きました。すると、「この間の話を聞いていたもんだ、走らなくなった」と・・・
正直、真っ青!でした。まだ無理だ、もう少し走ってて!と、思ってしまったのです。そして、馬の前で、軽率にこんな話はしてはいけないなと後悔してしまいました。
誰に相談しても、「そんな無名馬引き取ったら牧場の負担になるだけだ」と、答えははっきりと出ていました。
悩みました。もちろん引退、即処分、です。
「いらない」「引き取れない」と言ってしまうと、彼への凄い裏切り!にもなってしまうと感じてしまったのです・・・。
数多くの無名馬が競走引退後、簡単に処分されてしまいます。オープンを張った人気のあった馬でさえも知らないうちに、処分された後だったりもします。これは競馬の世界ではある意味しょうがない現実でもあります。当牧場でも今まで幾度か、引退するから引き取ってくれないかという馬の話はあり、気にはなりながらも、やはり安易には引き取れずお断りした馬もいます。
そんな中、ミナミプレジャーは、なんとなく気になり、引っかかり、どうしても「引き取れない」とは言えなかった・・・。
そうです、大げさに言うと“運命の赤い糸”みたいなものを感じてしまったのです。
中津競馬の惨状を思うとき、とにかく一頭でも馬を救いたい思いが強かったのかも知れません。
そして、2001年6月17日、ミナミプレジャー号晴れて黒潮牧場の仲間入り!
・・・これも、その馬の持つ強運だと思いました。
地方競馬を走り続けた名もなきアラブ馬は今、
山と緑に包まれ、穏やかな第二の人生を歩み始めました。
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